1.生息分布
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2.生息環境 主に海抜800mまでの熱帯雨林の樹幹に生息し、1mに及ぶ長い花茎を伸ばして1茎当たり8-10輪の白花を2列で同時に開花する。生息域での年間気温は18-30C(月平均)、湿度は5-10月で70%‐80%、2月で最低湿度40%程度となる。常時高湿度・高密度な樹林帯ではなく、むしろオープンフォレストに多く観測される。ボルネオ島サバ州では海抜1,500mの樹林帯でも、またオーストラリア北部(クイーズランド)では、一部は地上あるいは岩性も観測されている。台湾産(formosana)をPhal. amabilisとするかP.aphroditeの変種とするかは議論されるところであるが今日ではPhal. aphroditeのsubspとの説が有力である。 | ||
3.形状 3-1 花 1.花被片 胡蝶蘭の中では大型の花で、amabilisとは愛らしいという意味である。現在主に慶弔用の大半の胡蝶蘭は本原種を親とする改良品種といわれる。背萼片(Dorsal Sepal)、花弁(Petal)、側萼片(Lateral Sepal)ともに純白色。唇弁(Lip)のカルス全体やカルス周辺の側弁の一部は黄色で、赤色の楕円状あるいは細長い斑点が入る。標準的な花弁サイズはDorsal Sepal:4cm x 2cm、Petal:4cm x 5cm、Lateral Sepal:4cm x 2cm。地域によりサイズはかなり異なり、ボルネオ島産が最も大きく、次いでJava産となる。インドネシヤで本種は国花とされている。遺伝学的には現在のフィリピンPalawan諸島でPhal. aphroditeから進化したとされる。 若草の微かな香りがあるが漂う程は無い。花は花茎の基部から順次咲き1か月程度でほとんどが開花する。花の寿命は比較的長期間(3週間程度)で1か月以上維持するものも見られる。下写真で上段左がボルネオ、右がJava島。下段左はニューギニア西部Irian Jaya、右はフィリピンPalawan生息の原種である。
2. リップおよびカルス リップは中央弁(Midlobe)、側弁(Lateral lobes)およびカルス(Callus)で構成され、リップ中央弁の長さは約2.5cm。先端が白色。全体が黄色また一部が青紫色となる変種がある。中央弁は左右対称で基部側左右に3角突起を、リップ先端には中央弁の長さにほぼ等しい2本の巻髭があり、内側方向に伸びる。中央弁の形状は生息地域ごとにユニークであり、しばしば生息地の判定に利用される。 一方、カルス(写真中央および右)は、一対の角状(歯状ともいう)突起を左右にもつ盾のような形状からなる。ベースは黄色で、赤褐色の斑点がランダムに散らばり、縁は丸みがある。この部分は非常に硬い。カルス形状はamabilis系他種(Phalaenopsis節)との判定に用いられる。
下写真に生息域毎のカルス形状サンプルを示す。
3-2 さく果 さく果は花茎の色に同色となり青軸では緑色(写真左)、赤軸では茶褐色(写真右)の7cm長。6本の薄い縦溝が入る。赤軸は主にBorneo産に見られる。Irianは両者が混在する。花被片は受粉後縮れて枯れる。写真左は交配後凡そ3ヶ月、右は1か月の状態。4ヶ月で採り播きができる。3-3 変種および地域変異 Phal. amabilisの生息地域は胡蝶蘭のなかでPhal. cornu-cerviと並んで広範囲に分布しており、その結果としてリップや花弁形状に地域差が見られる。DNA研究では、現在のフィリピンPalawan諸島においてPhal. aphroditeから進化し、Borneo、Sumatra、Javaへ分布したとされる。これまで台湾でPhal. amabilisとされたformosanaはPhal. amabilisではなく、Phal. aproditeのsubspと分類される。インドネシアIrian java、east java、sumatra、およびマルク諸島生息種は花弁(Petal)が丸みのある形状に対して、ボルネオでは花弁基部が細く伸びた菱形が多くみられる。サイズも大きい。現在入手可能で最も大型の地域変種としては、輪花数は少ないがボルネオ島サバ州のgrandiflora(花径10cm)である。Petalは5cmを超える。栽培下で花茎は50cm - 1m。自然では1.5m程になると言われる。1. 亜種および変種 a. amabilis subsp. moluccana インドネシアスラワジおよびマラッカ島産で、リップ中央弁カルス寄りの左右の突起(lateral lobes:リップの3角突起)が小さなもの。中央弁は他生息の本種が3角形状であるのに対して長方形状に近い。 b. amabilis subsp. rosenstromii パプアニューギニア、オーストラリア産でリップ中央弁の左右の突起が前記同様に小さく、前記は長方形に対して、本種ほぼ3角形となっているもの。 c. amabilis var. aurea 写真はJava生息種。リップ全体が黄色。 d. amabilis fm. grandiflora ボルネオ島サバ州産。Phal. amabilisの中で最も大型種である。 a. amabilis sp リップ中央弁がamabilisと異なっている点と、セパル・ペタルに淡いピンク色と中央弁形状からはPhal. schillerianaとの自然交配種のような様相ではあるが、amabilisとschillelrianaが共存する生息域は知られていない。Phal. aphroditeとのschillerianaとの自然交配も考えられるがカルス形状はamabilisに近く可能性は残るものの同定は困難である。一方、schilleianaにはPhal. equestrisとの自然交配種Phal. x_veitchianaが知られているが、下画像からはequestrisがミックスした様態は見られない。 b. Palawan form Palawan産Phal. amabilisを下写真に示す。特徴としてリップ中央弁の左右の突起(lateral teeth)がやや小さく、ボルネオ産のスリムな形状に対してPhal. aphroditeに近く、一方でカルスはJava、 Irian、 Sumatraに比べてBorneoに近いことが画像から伺える(一部の株にはスリムなリップも見られる)。写真右端の中央弁つけ根中心部の楕円形の淡褐色の滲んだ模様はPhal. aphroditeやPhal. sanderianaに見られ、インドネシアやマレーシヤ産には見られない。 今日Palawanでは本種やPhal. sumatrana f. paucivittata (zebrina)など、フィリピンとボルネオ島をつなぐルート上にあって、変異や地域差を知る上で貴重な地域だが、州外への蘭の持ち出し規制が厳しくなっており入手が困難である。 c. 地域的分類 遺伝学的視点から見た進化と分布はPhal. aphroditeのページに記載。 3-4 葉 amabilisの葉は長楕円形で、幅7-8cm、長さ20cm。4-6枚の葉をそれぞれ左右対象に交互に展開する。上段はBorneo Sabah産Phal. amabilisの葉の表裏を示す。、下段左はJava Irian、右はPhal. amabilis grandiflora (Borneo)。の葉である。地域あるいは変種により葉の色や形状が若干異なる。ボルネオ島産は、しばしば特に新葉の基部や葉裏の一部に茶褐色がかかり、この色は成長とともに多くは緑に変化する。特にgrandifloraは濃緑色と茶褐色が混在し、成長しても茶褐色が残ることが多い。Irian産には葉の表裏とも緑色で茶褐色は見られない。SumatraやPalawan産も同様に青リンゴ色で、裏はやや薄緑となる。自然界では新葉は水平方向に伸びるが、コルク植え等の下垂支持体取り付けでは、新葉が出れば古い葉は垂れ下がり、Phal. giganteaやP.bellinaのように太陽光が葉に直交するのを避ける姿勢と共に、照明が葉全体に当るように、葉は互いに角度をずらし扇状に展開する。人工栽培において、ポット等の水平植え付けでは、主茎は真上に伸長し、葉は左右に展開する。このためそれぞれの葉は成長すると新しい葉は古い葉の上に重なる。結果、下葉は成長を止める。
3-5 花茎 IrianおよびSumatra産の花茎は茶(赤軸)と緑(青軸)の2種類があり、Irian産では花茎が茶のものは根冠が薄茶、緑のものは根冠も緑色が多い。筆者が所有するEast Java生息種の花茎は茶色のみで、蕾および根冠も茶系統で、Phal. amabilis f. grandifloraを除いて(grandifloraは花茎が茶であるが、殆どの根冠は緑)、いずれも花茎の色と根冠の色合い一致する。花茎はしばしば2本あるいは3本に分岐する。分岐した花茎の着花数は4-5輪ほどと主花茎に対して半数程度となる。3-6 根 コルクや写真のヘゴ板などでは根張りが活発である。空中根は皺のある円筒形で、胡蝶蘭のなかでは太いことから、気相の大きなコンポストが適す。根は照明が当たる面と、背面とで機能が異なって発展するようであり、表面は白銀色の皺皮、背面は写真右に見られるように支持体に取り付くための短い繊毛根が密集して発生する。また根冠も日焼けのように、照明が当たる面は褐色に、背面は緑色を帯びる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4.育成
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5.特記事項 特にない。 | ||