1.生息分布
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2.生息環境 温度15 - 31C(山岳部)、湿度70%以上。生息標高域についての情報は少ないが、 近年入荷する株の多くがPhal. amabilisやschillerinaなどと同じ高温環境の栽培において弱体化する様態が見られることから、マーケットにおける本種の生息域は800m - 1,500mの高域に移りつつあると推測される。 | ||
3.形状 3-1. 花 1. 花被片 花名はインドネシア・セレベス(現スラウエジ)島生息を示す。花茎は5月に現れ、7 - 8月に30輪程の花が1本の花茎の基部側から順次開花する。また晩秋から冬にかけて開花が見られる場合もある。若い株や状態の悪い場合は3 - 4輪の花を順次開花させ、同時に多輪花とならない。花の直径は3.0 ‐ 3.5cm。背ガク片(Dorsal sepal)と側ガク片(Lateral sepal)は白色。花弁(Petal)には基部から数本の、滲んだような茶色の棒状斑点が水平方向に入り、花弁が前屈み(外巻き)に咲く。背ガク片はヘラのように湾曲する。リップは多くの種が前方に伸びるのに対して、本種は下方に向かう。稀に背萼片のみ、あるいは全ての花被片が薄い黄褐色のものがある。ヘゴやコルクつけでは、花茎の基部から先端に至る開花が6ヵ月以上続くものがある。一度先端まで開花した花茎は枯れ、翌年は新たに発生した花茎に花を着ける。
2. リップおよびカルス 下写真(左端)は手前ペタルを取り除いたもので、左右のリップ側弁は多くの種と異なり外側に向かって開いている。カルス(右写真)はamabilisと同じ1組。白色をベースに朱色の不規則な曲線や点模様が入る。カルスの先端は黄色。中央弁には基部から白色の面に朱色の縦線が5本、中心部に向かって走る。この朱色はオレンジ色や黄色の個体差がある。中央弁表面には微細な凹凸がある。中央弁先端部の外縁には細かい凹凸がある。 蕊柱の背側は薄い青紫色(左写真)で、基部には他の属には見られない大きな三角突起が左右にある。
3-2 さく果 さく果はStauroglottis節のPhal. equestrisやPhal. lindenniiと同様に花茎の赤軸と同色で、さく果も茶褐色となる。右はフラスコ苗で発芽して暫くは単緑色だが、1年半程で葉に模様が現れ始めた様態。
3-3 変種および地域変異 変種として花被片全体が白色ではなく、薄い黄褐色のフォームがある。3-4 葉 長さ17 - 19cm、巾3.5 - 4cm。葉は銀緑色をベースに、泥緑色の大理石風模様が入る。この模様はやや赤みを含んでいる。同じ大理石模様のPhal. schillerianaやPhal. lindeniiなどの新鮮な緑色とは異なる。通常、Phal. schillerianaやPhal. lindeniiなどの葉の裏面は赤緑色で、新葉の段階ではエッジから中心に向かって表面に赤みを帯び、年と共にこの赤みが薄れるものが多いが、Phal. celebensisは葉全体に赤味が残る(右写真)。栽培では4‐ 6枚程度の株となり、それ以上の大株にはならないようである。写真のように垂直に垂れ下がるためポット植えは適さない。下段は本種とPhal. schillerianaの葉模様の拡大比較画像。
3-5 花茎 花茎は茶褐色の赤軸。50 - 60cm長で上部に向かって伸びるが、やがて花が咲き始めると弓なりとなる。Phal. lindeniiのような多数の分岐は一般種には見られないが、稀に下写真右が示す3-4本に分岐する株がある。また6月から12月まで花茎を伸ばしながら開花を繰り返し花茎は80cmまで伸長した株も観察された。一方、花茎だけが1m近く伸長し、その後30輪程が約2週間で全開したケースもある。花茎は一過性で、咲き終わると枯れ、翌年また新しい花茎が出現する。これはPhal. schillerianaやPhal. lindeniiなどと同じ特性である。
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4.育成
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5.特記事項 晩春から12月まで5輪ほどの開花を続けていたヘゴ板取り付けの株で、長期に渡る順次開花による疲労で全ての葉に細かい皺が11月から生じるようになった経験がある。このような状態が見られた場合は花茎を早期にカットした方が、極度の作落ちを防ぐために良いと思われる。疲労や作落ちが生じると翌年は花茎は出るものの花をつけないことがある。 | ||