1.生息分布
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2.生息環境 海抜500m以下。温度22-32C.湿度85%以上。川辺の薄暗い林間に着生。開花季節は特にない。タイにも生息するとする説がある。 | ||
3.形状 3-1 花 1. 花被片 花被片は抱え(前屈み)咲きで、黄色地に茶褐色の棒状班がある。花名は花被弁基部にある茶褐色の暗い(濃い)色を意味する。花径は3-3.5cm。Phal. fuscataはPhal. kunstleriやPhal. viridisと極めて類似しており、胡蝶蘭の中では、これらとの区別が視覚的には最も難解な種である。Phal. fuscataの花被片の色は、E. ChristensenがPhal. viridisと比べて黄色をベースに茶褐色の斑点であるとする見解に対して、Grayは黄緑色であるとしており確定的ではない。それぞれで取り上げられたベース色は個体差の範囲に含まれる可能性もある。 リップ中央弁の色については、Phal. fuscataやPhal. kunstleriは黄色あるいは黄褐色、Phal. viridisは白色としているが、Grayは前者も白色があるとしている。Phal. fuscataの特徴として、他との違いで共通している点は2つ挙げられ、一つがPhal. kunstleriは蕊柱の長さが短く基部が角張っている点と、他がposteriorカルスの形状の違いである。花期は晩春。無臭。
2. リップおよびカルス 左写真はPhal. fuscata、右はPhal. kunstleriのカルスをそれぞれ示す。anteriorカルスは先端2分岐の歯状突起。Sweetの手書きPhal. kunstleriのカルス形状図では、posteriorカルスの先端は2分岐し、中央弁先端方向を向いているのに対して、pupulinのイラストでは右写真のように八の字となっている。またReichenbachのイラストでは左写真のように外側を向いている。これらからするとposteriorカルスの先端形状ではfuscataとkunstleriとの違いを判別するデータにはならない。本サイトでは写真は左がPhal. fuscata、右にPhal. kunstleriとする。Phal. fuscataのposteriorカルスは、基部中央付近から発生して、つけ根が短く、先端がカイザー髭のように外側に反るのに対して、Phal. kunstleriは、つけ根がリップ基部から長く平行に延びて、先端は’ハ’の字となっている。但し、これが前記したように両種の判定基準になるのかどうかは明確ではない。またE.A.Christensonは蕊柱の形状の違いを指摘しているが、これも前記posteriorカルスの異なる両者に混在していることからユニークな特徴とは考えにくい。マレーシア現地の原種専門業者でも、これら2種は同じ地域にも生息していることから一層判別を困難にさせているとのことである。
3-2 さく果 さく果はPhal. cochlearis同様に表皮に艶はなく、6筋の溝があり先端に向かって太くなる。長さ5 - 6cm。花被片は縮れて枯れ落ちる。
3-3 変種および地域変異 花被片基部の茶褐色の模様は多様であるが、変種とされるものは知られていない。3-4 葉 葉長35㎝、幅15cm。ミズ茄子型。中厚で固く張りがある。写真は野生株で、Phal. giganteaと間違えるほど大きく葉形状も似ている。野生ではPhal. gigantea, Phal. doweryensisに次いで大きな葉に成長する。 低輝度下では濃緑色となる。本種は高輝度を好まない。葉は下垂するため、ポット植えには適さない。敢えてポットとする場合は斜め吊りが必要となる。
3-5 花茎 花茎は50-60cm長。2-3本発生する。分岐は見られない。先端に3‐4輪の花を着け花が終了しても花茎は枯れない。翌年にその花茎の先端に花芽を着ける。花茎の形態はトップ写真を参照。3-5 根 コルク付けの場合、根は活発に長く伸長する。Phal. venosaやPhal. viridisと比較するとやや細い印象があるが、環境による偏差の範囲であろう。 | |||||||||||||||||||||
4.育成
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5.特記事項 本種は前記したようにPhal. kunstleriとの区別が極めて難しく外見で分類することは困難である。また現地原種専門ナーセリであっても明確に区別することができる人はまず見かけない。また本種がフィリピン(Palawan)にも生息すると言われているが、これまで複数のフィリピンの大手ナーセリからはフィリピン産Phal. fuscataは見たことがないとのことである。 | ||