1.生息分布
| ||||
2.生息環境 海抜400m以下。熱帯雨林の林冠にも生息することから温度および湿度の適応範囲は広い。胡蝶蘭のなかで最も大形の種である。開花までに野生種では7-8年を要することから大株の乱獲が進み、現在、低地林では殆んど見ることはできないと言われる。自然界では春と秋に開花が見られる。 | ||
3.形状 3-1 花 1. 花被片 花被片は4-5cm。乳白色あるいは淡黄色をベースに茶褐色や赤褐色の多数の斑点が密に入る。下垂した銀緑色の花茎に、葉に隠れる位置で20輪前後の蝋質の花を同時に開花させる。すべての花被片の地色が黄色となるものはPhal. gigantea v. aureaと呼ばれている。花名は葉の大きさからgigantic”巨大な”という意味。本種は現地俗称で”象の耳”と呼ばれる。 花は蜜柑の皮を剥いたときの柑橘系の匂いがする。Sabahなど東ボルネオ島産の花被片はベースが白色で斑点が赤いものが多くなると言われる。野生種では開花まで7-8年、培養による実生では5年ほど要する。台湾からの入荷は全て培養苗である。温室での開花期は晩夏あるいは早春。
2. リップおよびカルス リップ中央弁は基部から先端に向かって青紫色のベースに白色のストライプ状のパターンが入る。先端は白色で丸みのある凸型。繊毛はない。側弁は黄色で内側には花被片の斑点色と同じ色の斑点が入る(写真中央)。中央弁の竜骨突起は小さいが、隆起の比較的大きなものも見られる。 カルスは2組でanteriorおよびposteriorともに先端を2分岐する突起形状で、posteriorカルスの先端は右写真が示すように八の字方向を向いている。
3-2 さく果 下左端写真は受粉2.5ヶ月後のさく果である。さく果の表面は艶のなくソフトな質感がある。6つの溝があるが先端部までは及ばない。株サイズに比例してさく果も胡蝶蘭の中では最大である。表皮の質感やこの形状の特徴は太さを除けばPhal. cochlearisのさく果と類似する。中央写真は蒔種から半年後のフラスコ内苗。右写真はフラスコ出しから半年後の苗である。野生株では自家交配においても受粉率が高く、また特に難発芽性は見られない。
3-3 変種および地域変異 1. Phal. gigantea f. aurea花被片は白地に赤褐色斑点をもつのが一般的であるが、上記(1)花被片の写真中段右および下段に示すようにベースの色が黄色となる種である。 2. Phal. gigantea f. alba (decolorata) 花被片の白地に、薄黄緑色の斑点をもつ種とされる。 3-4 葉 胡蝶蘭の中では最大の大きさとなる。葉は卵状長楕円形で1mを超すとも言われるが温室栽培では50-60cm長が限界であろう。幅は25cm前後。表面は銀鼠色のある緑色で蝋質で厚い。裏面はやや白っぽい。高輝度で葉面温度が高くなると葉は黄ばみ易く、照射時間を短くするか、通風によって温度を下げる必要がある。通常は葉は4枚程度で、大きな葉にするためには支持材の根張り空間を大きく取ることが不可欠で、また夜間湿度を90%以上に高めることと通風を良くすることが必要。葉は下垂するためポット植えは適さない。コルク、ヘゴ板あるいはバスケットの斜め吊りが必要。温室栽培では、葉は比較的短く、より丸みをおびる傾向が見られる。下写真はいずれも野生種であるが、左および中央は葉が温室栽培で新しく成長、右は入荷直後の株。
3-5 花茎 花茎は葉の裏側で、ほぼ真下に向かって伸び、葉とほぼ同じか、やや長くなる。開花終了後も花茎は残しておくと、翌年再び伸長して花を付けると言われるが、枯れるものも多い。花茎の発生は殆どが1本で分岐は見られない。大株では2本がしばしば見られる。花は大きな葉の裏で隠れて咲くことが多い。3-6 根 ヘゴ板あるいはバスケットが成長がよく、根は活発に伸長する。30cmを超える大きめのヘゴ板でないと1年程で根がはみ出てしまう。下写真はコルク取付から5年経過した状態である。古い根(苔が付着し緑色)と新しい根(銀白色)が重なり合っている。大株にするには根張りの広い空間が必要で、海外では直接自然木へ取り付けたり、根をヘゴチップで厚く覆い、保水性と共に根張り空間の体積を増やして大株に育てている。
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4.育成
| |||||||||||||||||
5.特記事項 胡蝶蘭が将来CITESのAppendix Iになるとすれば、Phal. giganteaが筆頭候補になると言われる。それほど生息域では数が減少しているそうである。現在(2014年)マレーシアおよびインドネシア共に野生種の入手は極めて困難とされ、マーケットでは台湾やタイからの実生が多い。 | ||