1.生息分布
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2.生息環境 海抜1,000 - 1,500m、温度15-25C。湿度80-90%。年間降雨量3,000mm - 4,000mm、12月から2-3か月の乾季には低気温となる。 | ||
3.形状 3-1 花 1. 花被片 小型の胡蝶蘭で花径4-5cmの可憐な花を咲かせる。花被片は白色あるいは薄桃色をベースに薄紫の縦ストライプが5-6本入る。花被片はPhal. celebensisのように前方に巻く(抱え咲き)ことはなく平坦である。リップ中央弁は先端部から中心部にかけ、滲むように赤紫から青色まで、多様な色の変化をもつ。 花期は晩春から晩秋まで、しばしば長期間に渡り5-6輪づつ咲き続ける。温室では晩夏が多い印象を受ける。ストライプ系交雑種の親に用いられると言う。花名は栽培家J.J.Linden名に由来。 2. リップおよびカルス 右図はリップ側弁がStauroglottis節(Phal. equestris, Phal. celebensis)独特の形状で長楕円状倒卵形。中央弁は楕円形で5本の赤紫のストライプが縦に入る。先端部に行くにしたがって青紫味が増す。先端が尖る。カルスは1組で縁側が黄色、赤褐色の斑点がランダムに入る。
3-2さく果 さく果は緑色から緑茶褐色。本種は高地に生息しているため、中温栽培が良いとされる。高温期(夜間22C以上)の交配の成功率は低く、秋から冬にかけて気温が夜間18C昼間25C程度になると交配成功率が高まる印象を受ける。胡蝶蘭の交配の成否は環境温度に大きく影響を受けるとされるが、本種はその典型種と思われる。写真は交配2ヶ月後の子房で、花被片はやがて縮れて枯れる。右写真はセルフ交配1年後の無菌培養苗を示す。この段階ではまだ大理石模様は葉全体に現れていない。模様が出始めるのは採り蒔きから凡そ1年半後となる。
3-3 変種および地域変異
3-4 葉 表面は暗緑色に白銀色の大理石模様。若葉の時はPhal. celebensisと同様に赤味を含む色合いであるが、2年程で赤味が無くなる。この点、P.celebensisは赤味が僅かに残る。裏面は暗紫色。披針長楕円形。葉長12-15cm、幅4-5cm。無菌培養によるフラスコ内の苗は当初無地の緑色であり、大理石模様が現れるのは葉が2cm程に成長してからで、Phal. celebensisと比べてやや遅い。葉、花ともに鑑賞価値が高い。葉はPhal. celebensisと同様に典型的な下垂型の種であり、ポット植えには適さない。
3-5 花茎 花茎は赤軸で弓なりに50cmほど伸長する。分岐は僅かに見られるが、主花茎に最初は基部から先端に向かって写真のように広範囲に咲き、その後、環境が良ければ先端で5-10輪程を次々と、6ヶ月以上咲き続けることがある。初花において、Phal. celebensisのように花茎先端部にまとまって咲くことははない(Phal. celebensis参照)。
3-6 根 根は活着すると扁平で細かな皺をもつ暗銀色。根冠部は赤褐色あるいは黄緑色。活発に多数が伸長するが寿命が短い。このためコンポストに付着した根の数に対して生きている根は多くない。これはPhal. celebensisにも共通する特徴である。
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4.育成
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5.特記事項 本種は高地に生息すると言われているが、フィリピン原種ナーセリではルソン中部Aurora ProvinceのBaler周辺の海岸寄りの低地で採取した株が多数栽培されていた。フィリピンの業者によると、本種は同一株でありながら、環境変化によるものと思われる色変化や奇形がしばしば出現するという。花被片がセミアルバであったものが、翌年の開化では普通種のような色に変わったことがあり、これは他の変種と呼ばれる種には見られない様態であるとのことである。筆者温室では若干の色変化はあるが大きな変化は観測されていない。形状に関しては上記写真のようにリップが2組のもの、および2つの花が背面で接合した奇形が見られた。一方、現地では、aphyllae節の原種のように全て落葉し、気温が高くなると新たに芽が出ることがあるという。日本ではこのような様態を見たことがないが、すべての葉が落ちても根が生きている(固い)限り、枯れたものとして廃棄しない方が良い。 | ||