1.生息分布
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2.生息環境 温度25-30C。自然界の中ではPhal. fuscataなどと同じように薄暗い林に生息するとされる。 | ||
3.形状 3-1 花 1. 花被片 花被片は純白から、写真下段に示すような赤褐色のストライプが入るフォームを持つ。このストライプ模様が固定した種は少なく、毎年異なる。リップは中央弁の基部から中央部にかけて青紫色あるいは青紫色のストライプが数本入る。リップ側弁(lateral lobes)は黄色。花径4.5 - 5.0cm。2‐3本の花茎にそれぞれ3‐4個の花を付ける。稀に花被片のそれぞれの先端が黄緑色(上段中央)のものがある。花もちは胡蝶蘭の中では長く、1ヶ月近く咲き続ける。香りは午前から午後にかけ、明るい時間帯に比較的強い香りを出す。夜間は匂わない。匂いは個人により感覚が異なるが、漆喰のようなPhal. florensensisやPhal. zebrinaなどと共通する匂いを感じる。花名は4つの盾の意とされるが花形状との関連性は不明。 花被片形状は類似するが、赤褐色の線状斑点ではなく、大きな点状あるいは全体が赤色となる種がPhal. speciosaとして変種あるいは別種とされる。スマトラ島では赤色花弁のPhal. tetraspisは見つかっていないとのこと。
下は同一株で花被片に棒状斑点のある花と無地の花が同時開花している画像。
2. リップおよびカルス リップ中央弁には青紫色のストライプが入るものと、ストライプではなくPhal. speciosa f. christianaのように基部全体が紫色となるものがある。中央弁先端は繊毛が密集して生える。側弁は先端部を除き全体が黄色。カルスは2組でanteriorとposteriorともに先端を2分岐する歯状突起をもつ。中央弁や花被片形状はほとんどPhal. speciosa f. christianaと区別できないことから種名をPhal. speciosa v. tetraspisとする説がある。
E.A. Christensonは、本種とPhal. speciosaを別種とし、カルスについてはPhal. speciosaで2組、本種が3組としている。しかし本サイト所有の20株程のPhal. tetraspisにおいては、H.R. Sweetのイラストが示すような3番目のposteriorカルスが見当たらない。また本種とPhal. speciosaとの別の相違点として、リップ中央弁の先端から中央にかけての繊毛が、Phal. speciosaでは先端から中央にかけやや円形に分布しているのに対し、Phal. tetraspisでは、やや細長く尾を引くように分布しているとされ、さらにリップ中央弁の形状もPhal. speciosaはやや先端が茄型のに対して、P. tetraspisは長楕円形であるとしている。そこで両者を下記の写真で比較した。 それぞれの写真に示すサンプルからは、前記の説とかなり異なる。まず下段左おおよび中段左写真で、繊毛はいずれも先端から中央にかけて分布しており、H.R. SweetのPhal. speciosaとPhal. tetraspisのイラストとは逆の様態、すなわちPhal. tetraspisの中央弁の繊毛は先端部で円形に密集しており、Phal. speciosaでは分散している。中段右写真のカルス形状では、両者ともに2組の先端2分岐の歯状突起をもち、3番目の突起は見当たらない(注:P. sumatranaはposterior側に腺状突起をもつ)。また上段左端の花被片形状の写真比較では、側ガク片(Lateral sepal)形状がP. speciosaでは下向きに、一方、Phal. tetraspisは左右に開いているが、Phal. speciosaのページ内にある花被片写真に見られるように、Phal. tetraspisと同じ形状のものがあり、個体差の範囲と考えられる。下段左のリップ中央弁の形状(Phal. tetraspisは四角ばっている)と、下段右端の蕊柱先端の鋸波状の形はそれぞれ異なっているが、これが種の同定の要素となり得るのかどうかは、より多くのサンプルでの調査が必要である。
3-2 さく果 さく果は長く伸び、6筋の深い縦溝が入る。Phal. violaceaのさく果と似た大きさ形状である。花被片は交配後、さく果と同様な緑色に変色硬化し6-10か月間続く。
3-3 変種および地域変異 1. Phalaenopsis tetraspis f. albaリップ中央弁に青紫のストライプがないもの。
2. Phalaenopsis sp aff. tetraspis 花被片写真に示すような花被片に茶褐色や赤などの棒状斑点が不規則に僅かに入る株がある。この斑点は花被弁毎あるいは年毎に一定しない。下写真は棒状斑点と共にそれぞれの花被片に薄緑色が入る。これも一過性で稀にしか現れない。
3-4 葉 実生はやや小さいが、野生株では6-8枚、葉長25-30cm、幅8.5-9.0cmの大株となる。葉は下垂するためポット植えは適さない。写真はそれぞれバスケット植えである。ヘゴ板にも活発な根張りが見られる。
3-5 花茎 花茎長は30-40cm。開花後の花茎をそのまま残すと、翌年先端から花序を発生するが、新しい花茎の方が輪花数は多いため、花が終了した花茎はカットした方がよい。
3-5 根 根はpolychilos節よりは細くP. modestaよりは太い。筆者の経験ではミックスコンポストでは成長が良くなく、現在はすべてバスケット植えとしている。 |
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4.育成
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5.特記事項 一時期本種がPhal. sumatrana v. albaとされたそうである。P. sumatranaは本種とカルス形状が異なること、また花被片はPhal. sumatranaは硬く蝋質である点で判断できる。 Sumatra島ではPhal. tetraspisのみであり、Andaman, Nicobar島ではPhal. speciosaとPhal. tetraspisが共に生息するとされる。またPhal. speciosaとPhal. tetraspisは地域差であって同一種であるとする説がある。カルス形状に違いは見られないことからその可能性も残る。 | ||