1.生息分布
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2.生息環境 海抜800 - 2,000m。疎林地帯の木あるいは渓谷の日陰の岩に着生する。 | ||
3.形状 3-1 花 1. 花被片 花被片は1.5 - 2.0cm。薄いピンク色。花茎に2 - 5輪の花を同時に開花する。冬季に夜間10C以下(8C程度)に2‐3か月置かないと花茎が発生しない。花茎発生から2か月程で開花する。開花期は4 - 7月。雲南省では5月が多い。花はPhal. sumatranaの匂いを薄くしたような香りがある。この香りは同節の類似種Phal. hainanensis, Phal. honghenensisと比較すると違いがあることが分かる。
2. リップおよびカルス 本種、Phal. hainanensis, Phal. honghenensisは花被片外形からだけでは色が個体差の範囲で類似するフォームがあり同定が難しい。しかし本種はリップ先端が他種にはない逆ハート型をしているため判断が比較的容易である。カルスは2組でanteriorおよびposteriorともに先端2分岐の歯状突起がある。花粉魂は下段右写真に見られるように4個からなる。
3-2 さく果 さく果は茶褐色で細長い。花被片は1か月ほどで枯れ縮む。他種同様に4か月経過後にとり撒きを行う。写真右は種をまいてから6カ月経過後のフラスコ苗である。
3-3 変種および地域変異 変種とされるものは知られていないが、花被片の色は多様で薄いピンク色、青あるいは白味の強い色がある。下写真はフォーカスが甘く画像が不鮮明であるが、2015年にベトナムのサプライヤーから中国雲南省からの株として送られた写真である。入手が出来なかったが、もし入荷をしていればPhal. wilsonii f. ceolureaとして初登場したものと思われる。幻のセルレアフォームとなった。
3-4 葉 葉数は4 - 5枚以内で、葉長6.5 - 8.0cm、幅2.5 - 3.0cm。冬季および開花期は野生では落葉するが、温室では寒期や乾燥がないため多くは落葉しない。Aphyllae亜属(Phal. braceana, wilsonii, minusなど)や、 Parishianae亜属(lobbii, gibbosaなど)は自然環境において、冬季や乾季には落葉する種であり、人工的な栽培においても稀に全ての葉が落葉することがある。根が固ければ生きており、春には再び葉が発生する。温室栽培では落葉の頻度は少ないものの、時として1年近く根だけの状態(当サイト温室での最長記録は1.5年)を続ける場合も見られる。固く緑色の根が少しでも残っていれば、冬季の数ヶ月間は潅水をやや控えめにし、その後通常の潅水をする。また根に十分な照明を与えないと、いつまでも葉は発生しない。このためこれらの種をミズゴケのように根を覆い隠してしまう植え込み方法は適さない。芽を出すには冬を10C程度の低温に3か月程度、乾燥気味に置くか、春先に自然に任せるのではなく、強制的に10-20ppmのBA(ベンジルアデニン)を2日置きに3‐4回散布する方法で芽が出た経験がある。
3-5 花茎 花茎は4.0 - 8.5cm長。細いが極めて固い。写真は1月初旬での花茎である。開花中あるいはほぼ同時に花茎と葉を伸ばすこともある。その後いずれも新しい葉を含め4枚ほどの葉を付ける。この状態になるのは開花後である。花茎が出ない場合でも3月末から4月頃、頂芽点から小さな芽が現れる。落葉タイプの共通の問題として、最初に現れる頂芽は病気になりやすいので注意を払い、2週間間隔を目途に殺菌剤で予防した方がよい。
3-6 根
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4.育成
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5.特記事項 外見からはリップ中央弁の形状以外、同節のPhal. braceana、Pstobartiana、Phal. honghenensis等との区別は難しい。 | ||