栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2023年度

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2月

現在開花中のBulbophyllum inacootesiaeVanda foetida

 Bulb. inacootesiaeが開花しています。本種はフィリピン固有種でミンダナオ島Bukidnon1,300m近辺に生息、2016年OrchideenJournalに発表された新種のバルボフィラムです。その生息域から夜間平均温度が 20℃以下となる環境が必要となります。Vanda foetidaはスマトラ島北部の生息で、高温タイプです。当サイトでは毎年この時期に開花し、現在1.5mほどの背丈になっています。

Bulbophyllum inacootesiae Mindanao Vanda foetida Sumatra

現在開花中のDendrobium spectabileSchoenorchis buddleiflora

 最近の異常気象(気温)で晴天日の高温室の最高温度は32℃に達しています。冬季期間中は、換気取り入れ口は断熱材で冷気が入らないように塞いでいるためです。こうした例年にない異常気温によるランの生態への影響には興味があり、この2-3年間開花のない種や種名不詳種の開花を期待しているところです。そうした中、現在開花中のDen. spectabileSchoen. buddleifloraを15日撮影しました。画像下の青色種名のクリックで詳細画像が見られます。

Dendobium spectabile PNG Schoenorchis buddleiflora Borneo

直近の植替え6種

 連日植替えをしており、その中から6種を選んで撮影しました。最近の植替えはデンドロビウムでは木製バスケットへ、一方バルボフィラムは1株が葉付きバルブ数8個以上のサイズで45㎝や60㎝長の炭化コルク+ヤシ繊維マットへの植替えが増えています。バスケットやコルク等への植付け方法は、趣味家毎に様々と思いますが、機会があれば当サイトの植付け例(根周りの処理等)を画像を用いて紹介したいと思います。植替えではそれまでの支持材から株を取り外し、根を洗浄・病害防除処理をした後、根同士が互いに接触しないように如何にミズゴケを絡ませ、新たな支持材に植え込むあるいは取り付けるかで、その後の順化栽培に影響を与えます。

Dendrobium jyrdii Palawan Dendrobium bracteosum white PNG Dendrobium jiewhoei Borneo
Dendrobium khanhoaense Vietnum Coelogyne pandurata Borneo Bulbophyllum grandiflorum Sumatra

Bulbophyllum chrysendetum これまでのBulb. concinnumからの種名修正

 本種は2017年、Palawanから種名不詳のBulb. spとして入荷しました。同年末に開花を得て花形状から類似するバルボフィラムとして、タイ、ベトナム、ボルネオ島、フィリピン、インドネシアなどに広く分布するBulb. concinnum、あるいはフィリピン固有種のBulb. chrysendetumのいずれかと見做して調べました。その中でJ.Cootes著書 Philippine Native Orchid Species 2011にはBulb. concinnumの記載はなく、一方でBulb. chrysendetumのページはあるものの花茎当たりの同時開花数は4輪まで(up to four blooms)で、その生息地はミンドロ、レイテ島、Visayas seaとされPalawanは含まれていませんでした。これらの情報から当サイトでは本種をchrysendetumではなくconcinnumとしました。この種名決定までの経緯の詳細は2017年12月の当歳月記に記載しています。しかし今月、下画像に見られる開花期を迎えセパル・ペタル、葉及びリップ等の詳細を撮影し、改めて細部の画像をよく見ると、concinnumではないのではとの疑問が生じ、前記著書の輪花数を除けば多くの点でchrysendetumに近く、輪花数は昨年12月の歳月記で取り上げたDen. fairchildiaeの例と同じく個体差と今回見做し、種名をBulb. concinnumからBulb. chrysendetumに修正しました。
 下画像は7-8日の撮影となります。5年以上植替えをしていないことから支持材背面に回り込んだ株には右画像と同じ程の花が現在開花しています。画像下の青色種名のクリックで、更新した本種の詳細情報を見ることができます。

Bulbophyllum chrysendetum Palawan

Dendrobium rhombeum

  Dendrobium rhombeumはJ. Cootes著Philippine Native Orchid Species 2011によればルソン、ミンドロ、レイテ及びミンダナオ島それぞれに広く分布するフィリピン固有種とされます。また本種とDendrobium heterocarpumとは近縁種で、IOSPEのDen. heterocarpumのページでは、そのシノニム(異名同種)にDen. rhombeumの記載があります。一方、同サイトのDen. rhombeumのページには両種は別種であるとの記載も見られます。当サイトが本種を得たのは2017年5月で2018年1月が初花となりました。このロットはフィリピン現地ラン園からPalawan島生息のDen. heterocarpumとしての入荷でした。しかし開花した花は大陸系のDen. heterocarpumのフォームとは異質な、Den. heterocarpumrhombeumの中間的なフォームを持つ種で、またこのロットにはDen. rhombeumも含まれていました。この両者の特徴をもつ中間種は、IOSPEではDen. rhombeumのページに掲載されているvar rhombeumリンク先の花画像に似ています。このようにDen. rhombeumheterocarpumとの関係は整理されておらず、この経緯は2018年1月の当歳月記に取り上げました。J. Cootes氏著書には両種ともPalawan島での生息情報の記載はありません。おそらくPalawanからの入手は当時も現在も難しく、フィリピン国内での流通もなく確認が出来なかったのではと思われます。

 今回Den. rhombeumを取り上げたのは、現在本種を3株を栽培しておりPalawan生息種としての希少性と、2021年まで毎年1月頃に開花があったものの、この3年間開花が見られず、一方で昨年の夏以降に、根元からの新芽ではなく高芽の発生が3株合わせて17本と増え続け、こうした様態は根に異常があることを示しており、植替えを行ったことからです。下画像で左から2枚目の株写真は、高芽を取り外した後の植替え前の3株を示します。この画像に見られるように根は傘骨のように放射状に垂れており半数以上がコルクには活着しないまま空中に伸出し止まっています。根は通常、湿度に対し正屈性があり、ミズゴケに覆われた炭化コルク側に伸長するのですがそうした様態は見られません。こうした根の様相は支持材の置かれた場所が悪く、本種は根周りの高湿度環境を好むにも拘らず乾燥気味であったことが考えられます。これは植替えから3年以上経過した割には炭化コルク上のコケの発生が少ないことから推測できます。そこで今回は炭化コルクから、その右画像が示すように木製バスケットに替えての植替えとしました。取り外した多数の高芽は別途ポットなどに植付けるのではなく、大株を目指して親株の根元に戻す形で植付けを行いました。その様子が右画像となります。

Den. rhombeum Palawan 植替え前の3株 2月1日撮影 バスケットへの植替え 2月3日撮影 高芽の戻し植付け 2月3日撮影

現在開花中の花2種

  この時期は多くの開花が見られます。その中から2種を撮影してみました。Bulbophyllum mastersianumは茶と赤フォームが同時開花しており、並べての撮影です。

Vanda luzonica Luzon Bulbophyllum mastersianum Bprnep


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